
榊原記念クリニック
- (院長:常務理事 住吉徹哉、副院長:堀川良史)
- (東京都新宿区西新宿2-4、新宿NSビル4階、延554.11平方米 管理室 延185.30平方米)
- 榊原記念クリニックは、榊原記念病院の外来部門として1982年10月に新宿NSビル4階に開設されて以来28年6ヶ月の間、循環器病専門のクリニックとして虚血性心疾患、高血圧、不整脈,弁膜症、先天性心疾患、大血管疾患など、12万人を超える患者さんの外来診療を担当してきました。2003年12月に病院部門が府中市に移転してからも、光ファイバーネットワークによる病院情報システムを活用して従来にもまさる緊密な連携体制をとりながら、多様化する医療ニーズに応え、常に受療者の立場に立った高度の専門医療の提供を目標として診療を継続してきました。また財団法人附属の臨床研究施設として、外来独自あるいは病院部門と一体となった臨床研究を行うとともに、専門医、看護師、臨床薬剤師、医療技術職、医療事務職の研修と育成に努めてきました。
- 本年度も榊原記念病院の外来診療部門としての機能を強化するとともに、臨床研究施設としての役割を果たすために、以下の諸項目について実践いたしました。
【診療体制】
- 2011年3月末現在、医師は常勤医師7名と顧問医師、記念病院医師、非常勤医師の計40名、医師以外の職員は看護師7名、臨床薬剤師6名、放射線技師2名、臨床検査技師19名、管理栄養士1名、医療事務職35名の計70名、総計110名で、月約6,000人の患者さんの外来診療にあたりました。
【稼動状況】
- 2010年度(2010年4月~2011年3月)の診療実績は、初診患者数2,767名(月平均231名)、再診患者数69,669名(月平均5,806名)で、延べ患者数は72,436名(前年度比1,487名減、月平均6,036名、1日平均248名)でした。主な検査の実施状況は、心エコー検査9,655件(月平均805件)、ホルター心電図3,999件(月平均333件)、ホルター解析受託3,688件(月平均307件)、心臓ペースメーカ管理1,350件(月平均113件)、トレッドミル・CPX858件(月平均72件)、放射線撮影22,154件(月平均1,846件)でした。
- 本年度も引き続き病院部門との連携の強化に努め、都区内およびその周辺地域さらには広域の受診者を対象として、入院受け入れの窓口ならびに退院後の受け皿としての役割を果たしてきました。榊原記念病院の年間入院患者7,357名のうち1,716名(23%)を当クリニックからの患者さんが占め、また退院患者7,272名のうち1,081名(15%)が退院後に当クリニックを受診しております。なお当クリニックの初診患者2,767名のうち448名(16%)が病院医療連携室からの紹介によるものでした。
【末梢血管部門の充実】
- 人口の高齢化に伴い、閉塞性動脈硬化症や下肢深部静脈血栓症などの末梢血管疾患を合併する心血管疾患患者は著増しており、その対策は急を要します。当クリニックでは血管外科専門医による末梢血管外来を2009年4月に開設し、2011年1月には末梢血管内科専門医を増員しました。本年度の末梢血管外来患者数は165名で前年度比70名増となりました。この領域でも、手術などの入院治療が必要な患者さんの受け入れ窓口および退院後の受け皿として、当クリニックの役割は今後も一層増大することが予測されます。そのため末梢血管エコー専門技師の養成や非侵襲的検査室の充実などの対応を進めております。
【睡眠時無呼吸外来の充実】
- 心血管疾患の発症や憎悪との関連が注目されている睡眠時無呼吸症候群に該当する患者は、当院受診者のなかでも増加しております。当クリニックでは2009年に睡眠時無呼吸外来を開設しましたが、診療をさらに充実させるとともに、病院と連携して入院精査を行うなど、心血管疾患との関連についての研究を進めております。
【重症不整脈患者への遠隔モニタリングシステムの導入】
- ペースメーカや植込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法など、植込み機器治療後の通院患者を対象とした先駆的な遠隔モニタリングシステムを2010年8月に導入しました。当クリニックの医師や看護師が、患者の自宅から電話回線を通して専用サーバーに送信された植込み機器の情報をインターネットを介して確認し対応するもので、遠方在往者を中心に現在86名がこのシステムによる診療を継続しています。その効用は確認されつつあり、今後さらに本システムを普及させるための課題を抽出し検討しております。
【循環器救急診療体制モデルの構築】
- 新宿に位置する当クリニックは府中市の病院部門とダークファイバーで結ばれており診療情報をリアルタイムに共有しています。また専用の救急車によって心血管救急患者を30分足らずで記念病院に搬送することが可能です。この特徴を活かして、「循環器救急疾患における診療所と専門病院間の診療体制モデルの構築」を研究テーマに厚生労働科学研究の分担研究施設として継続して参画してきました。複数の医療情報をシームレスに伝送する方法の開発など、クリニックと病院間の救急搬送を安全かつ先駆的なシステムにするための検討を引き続き進めております。
【患者教育・啓蒙活動の継続】
- 榊原記念病院が府中市に移転して以来、当クリニックには心血管疾患のみならず生活習慣病の治療目的で受診する患者が増加しております。生活習慣病の外来管理は心血管疾患の一次および二次予防に不可欠であり、当クリニックではその診療を大きな柱の一つとして進めてきました。
- 本年度も生活習慣病改善教室を計8回開催するとともに、ホームページを介しての生活習慣病予防の啓蒙、患者の立場に立った理解しやすい医療用説明ツールを作成するなど、患者さんの教育指導体制を充実しています。また循環器専門の医療機関として、心肺蘇生法や自動体外式除細動器(AED)の普及に指導的役割を果たしてきました。本年度も一般市民および心疾患患者のご家族を対象に、AEDを用いた心肺蘇生法の講習会を4回開催しました。
- 心不全患者の再入院予防を目的とした看護師による生活指導、臨床薬剤師による服薬指導など、医師だけでなく多職種が積極的に関わって、独自のプログラムや動画を駆使した説明ツールを作成し、患者指導を実践しました。
【地域医療連携の推進】
- これまでも当クリニックの医師が中心となって、副都心および周辺医療機関の医師、看護師ほか全ての医療職を対象とした循環器疾患関連の学術セミナーを定期的に企画開催し、循環器領域や生活習慣病に関する先進的知見の共有に努めてきました。また当施設の見学会や勉強会を主催し、情報の発信と連携を深めるための活動を進めてきました。
- 本年度も近隣医師会と共同の勉強会を3回、また全ての医療職種・医療事務職を対象とした勉強会(副都心サーキュレーションセミナー)を毎月1回開催しました。本年度の当クリニック初診患者2,767名のうち周辺医療機関からの紹介患者数は1,097名(月平均91名)と全体の40%を占めており、顔の見える医療連携を通して、循環器専門のクリニックとして地域医療の向上に貢献しております。
- また昨年、西新宿地区で初めての大地震等大規模災害発生時の避難訓練が大学病院や近隣医療機関も参加して実施され、当クリニックからも医師・看護師・事務職が参加しました。今後とも積極的に参画して、大規模災害発生時に当クリニックが果たせる役割について提案していきます。
【臨床研究の継続】
- 当クリニックの長年にわたる診療実績をもとにして、多施設共同研究に参画するとともに、循環器領域や生活習慣病関連の臨床研究を経年的に実施してきました。その研究成果は、医師に限らず、薬剤師・看護師・臨床検査技師・管理栄養士の各部門から、日本循環器学会・日本心臓病学会・日本心臓リハビリテーション学会をはじめ、多くの学会や研究会に報告し評価を得てきました。
- 本年度も糖尿病、慢性腎疾患などを合併する心血管疾患を対象とした医師主導型の前向きな臨床研究を4件継続するとともに、早稲田大学との共同研究など2件の新規臨床研究を開始しました。また心不全の患者教育、生活習慣病の栄養指導、アロマ吸入療法の臨床導入などは当クリニックの主要テーマとして、コメディカル部門と協働して臨床研究を継続しております。
- 榊原記念病院およびクリニックを受診し同意を得た全患者を対象とした長期的な前向き観察研究である榊原診療健康調査(SHIP:Sakakibara Health Integrative Profile) を病院と一体となって遂行しています。2011年3月末時点で既に19,000名を超える症例が登録され、本格的な追跡調査を開始しました。生活習慣病の登録症例数は約12,000例(うち高血圧症が約8,900例、脂質異常症が約6,800例)に及び、今後、生活習慣病の治療効果や長期予後についての解析を予定していますが、豊富な診療実績を活用した研究成果の発信は当クリニックの使命の一つと考えております。
【患者中心のチーム医療の実践】
- 当クリニックでは早くから診療室クラーク制度を導入したり、看護師や薬剤師などによる病状や診療内容の補足説明および生活指導・服薬指導等を積極的に取り入れるなど、多職種のスキルミックスを意識したチーム医療を実践してきました。また無床診療所のため各種委員会設置の法的な義務はありませんが、医療業務が円滑に進み、より良い医療を提供するために、医療安全委員会、感染対策委員会、薬事審議会、教育研修委員会など16の委員会を設置し、すべての職種が参加して積極的な活動を行っております。
- 本年度は医療安全や感染対策など医療従事者として重要な知識を共有するために、定期講演会を2回開催しました。また事務職も一定レベルで循環器疾患を理解したうえで患者対応ができるように、院内講習会を毎月1回実施するとともに、リーダー育成講座やOJTの基本修得講座等の院外セミナーへの参加を奨励し、専門知識を会得した職員の養成に努めました。事務職の院外セミナーへの参加は15名で延べ20回を数えました。次年度以降も継続してこれらの企画を進め、事務職を含むすべての職種が協働して互いに研鑽することにより、患者中心の質の高い先駆的なチーム医療の実践を目指します。
