長い待ち時間に、もの申す!(後編)



HOME > 榊原コラム > 長い待ち時間に、もの申す! (後編)

title-Status-Quo.jpg

第2回 長い待ち時間に、もの申す!

(後編)かかりつけ医に求む、待ち時間の「見える化」

2012年2月18日
文:浦野陽子

待ち時間よ、「見えろ!」

  • 移動先で、私はよく、手持ちのスマートフォンを使って、電車の乗換情報を検索します。 少しでも自分の時間をロスなく管理したい、そんな思いからです。乗車駅と降車駅を入力して、ポンと検索ボタンをたたけば、数パターンの行き方が現れます。ここには、電車
  • の発着時間と乗換駅の情報が、最短コース順に表示されるので、とても重宝です。
  • 乗換情報はほんの一例ですが、私たちは常日頃、様々なツールやサービスを駆使して、分単位の時間節約や捻出に実に熱心です。
  • しかし、中には、こうした主体的な時間管理が、なかなか通用しないところがあります。その代表格が、前回から話題にしている医療機関の「待ち時間」でしょう。何しろ一旦診察券を受付に出したら、まず数十分は確実、ともすれば1、2時間、すっぽりと、私たちの手中から奪いとられてしまうのですから。
  • 「理不尽だ~」と、叫び出したいのを、ここは大切な体のため、ぐっとこらえます。行き先が大病院であれば、長い待ち時間に対して、私はある種の覚悟をもって赴いている、と前回書きました。これが、近くのかかりつけ医に、インフルエンザの予防接種のため出向いたとしたらどうでしょう。待合室で、ゴホゴホと咳の止まらない人達と1時間、肩をつき合わせて待った結果、風邪でもひきようものなら、かえって本末転倒です。
  • そんな患者さんの抱く不便さの解消に向けて、開業医の医院では、携帯電話やPCを使って、医院の外からでも、リアルタイムで診察の受付番号を追えるサービスを採用するところが増えているようです。

オセロ事件

  • 私がこうしたサービスを知ったきっかけは、息子のオセロ事件でした。 穏やかなある土曜日の昼間、「ママー!鼻にオセロが入ったー。」と、突然息子の叫び声です。直径が1.3センチ程の小さな石の姿を探しますが、覗けど、覗けど、姿が見当たりません。観念して、住まいから徒歩2、3分の耳鼻科医院に電話すると、30人待ちの状況です。
  • colum2-2.jpgただ幸いにも、この耳鼻科医院では、診察に呼ばれた番号がPCや携帯電話で確認できたので、受付後は自宅に舞い戻り、コンピューターで確認します。よく見れば、番号の進み方は数分毎に1、2番のスローペース。この分だと1時間はかかる!そう思った時、自力でオセロ石を取り出す覚悟を決めました。
  • 懐中電灯とピンセットを使い、のぞいたり、つっついたりを20〜30分程繰り返したでしょうか。なんとか無事、子供の鼻から石を取り出すことが出来ました。この時、待ち人数はやっと半分に減った状況でしたから、すっかり待ち時間との勝負に、勝利した気分でした。
  • それまで、かかりつけ医で、待合室に拘束されず順番を待った経験は、皆無だったように思います。これも、ITを使った新しいサービスのお陰です。

「見える化」の醍醐味

  • 自分の番号までの待ち時間が予測できて、しかも離れた場所から確認できる。
  • この機能をうまく利用できれば、例えば、風邪気味で診察を求める近所の主婦の場合、時折、携帯を確認しながら、待ち時間を使って掃除機をかけたり、洗濯物を干したり、またクリーニング店に仕上がったセータを受け取ったりと、時間を有効に使えそうです。
  • また職場が医院の近くならば、自分の受付番号が近づくまで仕事を進め、目星がついたところで医院に赴くこともできるでしょう。
  • 現に後日、私はあまりに咳が止まらないため、この耳鼻科医院で吸入治療を受けましたが、既にこのサービスには親しみがあります。そこで、自分のコンピューター画面の隅に受付状況を表示しながら、平行で、記事書きの仕事を進めたところ、 かえって、いつもより予定の仕事がはかどる程でした。
  • とはいえ、やはり待ち時間中、番号を追い続けなくてはならないのは不便です。単に、受付の順番予約が出来るというだけでなく、さらに時間指定機能を付けて、診療希望時間の予約がしっかりとれるシステム。さらに言えば、予約当日の診療状況に応じて、順番が近づいたら呼び出しのアラームで知らせる機能があれば、もっと便利に使えそうです。
  • 1日の数時間をブロックし、生活機能を麻痺させる待ち方ではなく、日常生活を「進め」ながら、利用していける医療サービス。そうしたサービスには、私たちの生活リズムをサポートしようする優しさがあります。ここが、ITを使った待合サービスの醍醐味でしょう。かかりつけ医には、是非こうした新しいサービスへのアンテナを高くして、患者さんのニーズに答える医療サービスの実現を目指していって欲しいと思います。
  • 次回は、緊急時に、いかにして病歴や服用薬などの情報を伝達するか、その試みについてです。
  著者のプロフィール  

 

浦野 陽子(うらの•ようこ)
株式会社ヘルスビート 代表取締役

アメリカのニューヨークとボストンに15年間暮らした後に帰国。在米中より、米国における製薬開発や医学分野の研究発見を中心に執筆活動を行う。本コラムでは、米国医療に親しんだ筆者が、日本国内外の医療に関する新しい動きをレポートする。